研究紹介
先端ネットワーク研究室
研究テーマ
視線を向けて話しかけるARアバタ
インターネットの成熟とスマートフォンなど携帯情報端末の普及によって,人々の地理的な隔たりを越えた実時間の映像コミュニケーションがとても身近なものになりました.自分の仮想分身であるアバタを拡張現実(AR,Augmented Reality)で出現させ,これを遠隔から操作することで,離れた場所にあたかも実在しているかのように振舞うことも可能です.
現実世界における人とのコミュニケーションで最も大切なことは,話しかけている相手に対して適切に視線を向けることです.視線を合わせるアイコンタクトや身振りという行為は,しばしば言葉以上の効果をもたらします.グループコミュニケーションにおいて,離れた場所からネットワークを介して実際のミーティングに参加する場合も例外ではありません.
従来のアバタベースの遠隔コミュニケーションシステムは1対1の通信を基本としているため,仮想と現実が混在する3人以上のグループコミュニケーションにおいて,その場に参加する物理的な人の位置や姿勢情報を個々に認識し,それに応じたアバタの振る舞いを物理的に矛盾なく個別に制御することは困難な課題でした.
本研究室では,この問題を解決するため,グループコミュニケーションに参加する実際の人々(使用するスマートフォン端末)の位置や姿勢情報を共通ARターゲットの認識と端末間の直接的なネットワーク連携で共有し,これを各端末から見えるアバタの振る舞いに反映させるARグループコミュニケーションシステムを開発しています.アバタはグループコミュニケーションの参加者の誰がミーティングルームの何処にいるかを把握し,ある参加者の動きに追従してポーズや表情を変えて話しかけるアバタの様子を,別の参加者がそれぞれの視点から同時に見ることができます.自分だけに話しかけるアバタに親近感を持つ一方,自分に背を向け他者と楽しげに会話するアバタに疎外感を覚えるなど,現実のコミュニケーションに近いリアルな感覚をもたらすことが評価実験でわかっています.
このように,ミーティングルームの状況をアバタ自身が正しく掌握していることをグループ参加者が視覚的に認識共有することでアバタのリアリティを増加させ,グループコミュニケーションの質を大きく向上させることが期待できます.